年中さん 「○○ちゃん、描かないんですよ。。。」

 

絵を描かない子がいます。

そんなとき先生はどうされますか?

お母さんはどうなさいますか?

 

今回、年中さんのこの子はみんなが描き始めても、閉じこもったようにじっと座ったままでした。

先生は何度か声かけをされたようですが動こうとしません。

先生は私に「○○ちゃん、描かないんですよ」と困っておられます。先生は大変です。あっちでこっちで何かが起こってきますから、一人の子につきっきりというわけにはいきません。

 

そんなときのために私のようなものがここにいるわけですが、すぐさまその子に「はやく描きなさい」などと言うのが私の役割ではありません。体がしんどいのか、やる気がないのか、なにかしら描けない理由があるのか。先生に任された私はまずその子の様子に目をやりました。

 

 

 

もしかすると先生は、「はい、わかりました」と返事をしたにもかかわらず、その子に近づきもしない私をみて「早くなんとかして」とおもっておられたかもしれません。

 

やっと私がその子の横にしゃがみこみ「どうしたん。今日は描かへんの」と尋ねると、ひと呼吸おいて彼は「うまいこと描けへんねん」と言いました。

普段からこの子たちにうまく描くことを強要することはなかったはずなのに、こういう言葉が出てきました。この発言に私は少なからずショックを受けました。

うまく描きたい気持ちは成長の証しかもしれませんが「うまく描かないといけない」というプレッシャーが、筆をとるという絵を描くはじめの一歩をためらわせていたのです。

 

 

「うまいこと描かんでもええやん」と言った私は「ちょっと描いてもええか」と尋ねました。

「うん、ええで」と彼。

私は綿棒に墨汁を付け、ひとつ点を打ちました。

「もうひとつやってもええか」と聞きました。

「うん」と彼。この点には何の意味もありません。

すると彼も綿棒を持って、ひとつ点を打ったかとおもうと、ふたつ、みっつ。そして無数に点を打ったあと、「人を描く」と言って割ばしペンに持ち替え、丸く顔の輪郭を描きはじめました。

 

 

目をふたつ描いたあと、再び綿棒で点を打ち「アリさん」と言っていました。

はじめは何の意味もないただの黒い点だったのですが、アリというイメージに変わってきました。

 

口や耳、髪の毛まで描いたうえに、玉入れのカゴも描いていました。

私が何を描けと言ったわけではありません。この子の横で絵の変化ごとに写真を撮り、うなずきながら見ていただけです。

今日の課題である運動会でやった玉入れの様子を描きだしてくれたのです。

 

子どもが絵を描かない理由はさまざまです。

私たちはそれをしっかりみつめないといけません。

けっして急いで描かせようなどとはしないことです。

描きたくなければ描かなくていいというスタンスで子どもと接し、子どものいまの想いを全部うけとめてあげることが大切です。そうすれば多くの場合この子のように描き始めてくれますが、横につけば必ず描いてくれるとは限りません。今日1枚の絵を描かなくても、明日になれば描き始めるかもしれません。お話しするだけでもいいじゃないですか。

あわてずじっくり子どもと関わっていきましょう。

こちらの想いは全部子どもに伝わっていきます。

 

→安井幼稚園絵画指導の様子はこちらからもご覧いただけます。