京都府の企画する「こころの京都百選」という展覧会に出品する作家として私も選んでいただきました。
文化芸術室の方がお見えになってこの展覧会のことをお話しくださいましたのは2011年11月でした。うれしくて心が躍るようでした。お受けするも何も、こんな光栄なことはありません。
制作には各作家ごとにテーマがあるんですが、と芸術室のFさん。
そのとき私に渡されたテーマが「僧侶」でした。
まったく予想もしていない展開です!
普段の私の制作は、風景画と呼べるのかというような代物です。人物画もおもいついたように描きますが作品数は多くありません。
さあ、どうしようかと頭を抱えることになりました。
京都のお寺を少しまわったのですが、これを描こうというものになかなか出会えず、子どもの頃からお参りしていた祖父も眠る知恩院に取材させていただくことをお願いすることになりました。
知恩院で毎日行われている回向(えこう)がとても気に入ったのです。
若いお坊さんの修行なのでしょうか、南無阿弥陀仏を唱えている姿とともに唱名が私に響いてきました。
回向をしてもらう方がいらっしゃるとき以外にも、お堂に一人座してゆっくりと唱えられる南無阿弥陀仏は、とても心地よく私の身体と心に静かに届いてきました。
これを描こうと決めました。
お坊さんのお顔よりもおおきなリンやモクギョが目を引きつけます。
お堂の中は外気よりひと気温涼しく感じるのは、空気の静けさによるものでしょうか。
おおきな和ろうそくに火がともっています。
火の揺れから目が離せなくなりそうです。
ちいさいのは洋ろうそくだそうですが、火の揺れが違うのです。
結局描かないことにしましたが、はじめはリンも描くつもりでいました。
遠く正面の壁と畳の境界線が合わせた手のすぐ上に見え、合わせた手の形が浮き上がります。
リンは柔らかなシルエットとして壁ととけ込み、畳が白く妙な形を見せていておもしろいとおもいました。
描くのは合わせた手だけでもいい!
ともおもいましたが、しかしそれはちょっと意識的な感じなので却下。
やはり僧侶のまっすぐな姿勢の美しさは外せないのです。
やっと作品は完成しましたが、搬入の日まで落款は押さずにおきます。
展覧会は2013年春の予定です。
会期が近づいてきたらまたご紹介させていただきます。
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